平成26年度の活動 -全国俳誌協会-
創立五十周年を超え、当協会も新しい時代における存在意義を考えるべき時期となった。
流派、傾向を超えた交流の場を作り出すという趣旨の上に、時代の要請に応え得る活動を加味していかなければならないと考えている。
四月十四日、高幡不動にて第五十三回春季吟行俳句大会を開催。
境内の施設をお借りして句会を行った。
- 第一位
- 鳴き龍の鳴かぬ日もあり鳥雲に
落ち椿拾ひ仏心持ち帰る - 橋本 和葉
- 第二位
- 明王の喝ものの芽の騒ぎ立つ
歳三の大志は京へ緑立つ - 田村 隆雄
- 第三位
- 明王の鼻に穴ある春深し
囀りの頂点にある五重塔 - 岡田 淑子
俳人としても活躍されているご貫主の川澄祐勝様よりお寺の由緒や境内のご説明を頂き、有意義な一日であった。
五月には、創立五十周年を記念し、『全国俳誌協会50周年記念句集』を刊行した。
二十五誌、百七十二名が参加し、二百八ページの句集となった。
協会の過去の活動年表も付し、五十周年にふさわしい句集となった。
第二十回全国俳句コンクールには七百九十句の応募があり、左記の作品と、佳作五十六句が選ばれた。
- 全国俳誌協会賞
- 毛糸編む昔ばなしを編むように
- 鍬守 裕子
- 優 秀 賞
- 梅一輪海に呼びとめられている
- 飯塚 宣子
- 頷くも言葉の一つ日向ぼこ
- 木嶋 政治
- 強霜やひと固まりに村眠る
- 木戸 明子
- 秀 逸 賞
- 真っ直ぐは折れやすきかな曼珠沙華
- 角野 弘子
- 川よりも低き家継ぐ稲の花
- 坂本 正夫
- 日向ぼこしている事も忘れけり
- 奈良 弘
- チェンソーの音撥ね返し山眠る
- 河村 正浩
- 春の水宇宙伸びたり縮んだり
- 住 落米
- 日だまりに老人ふたり溶けている
- 西﨑 久男
- 居酒屋の隅節分の鬼もいる
- 菊地 香泊
- 飛ぶものはみな翳となり冬夕焼
- 佐々木紗知
- 掛大根村のかたちが変わりゆく
- 杉浦 悦子
六月二十九日(日)には、「第五十一回定時総会・俳句大会」を、東京都中央区入船のハロー貸会議室八丁堀において開催。総会では、本年の行事等が審議され、原案通り可決された。
総会終了後は俳句コンクールの表彰式と俳句大会が行われた。俳句大会の結果は次のとおり。
- 第一位
- 推敲を重ね金魚の泡ひとつ
梅雨に入る無音をつめたガラス瓶 - 星野 一惠
- 第二位
- 野放図になるしかなくて梅雨の蝶
ハンモックに重過ぎまいか夜のバッハ - 木之下みゆき
- 第三位
- 洗髪の指が探している出口
大青田現人神は手を振れり - 表 ひろ
終了後は、福福屋に会場を移し、親睦を深めた。
十月二十三日(木)、東京都港区のシェ松尾青山サロンにて、本阿弥書店と俳句図書館鳴弦文庫の後援により編集賞授賞式が開催された。授賞式に先立って臨時総会が開かれ、監事に、「蛮」主宰の鹿又英一氏の就任が承認された。
続いて、授賞式・祝賀会が行われた。受賞誌は次のとおり。受賞誌には記念の楯と総額十四万円の賞金が贈られた。
- 編 集 賞 「銀漢」(伊藤伊那男主宰)
- 編集賞特別賞 「かびれ」(大竹多可志主宰)
- 「白魚火」(仁尾正文主宰)
審査委員は、俳人の池田澄子氏、近代俳誌の研究家である東海大学教授の伊藤一郎氏、俳誌編集のプロである本阿弥書店の田中利夫氏の三氏。
選考にあたっては、形式、内容の両面から詳細にご検討をいただいた。
授賞式後、現代俳句協会会長・「岳」主宰の宮坂静生先生に「『きけわだつみのこえ』遺書改竄に触れ、上原良司のこと」と題したご講演を頂いた。
原典改竄は、俳誌編集に関わるものにとって重いテーマであった。
八十名を超える出席者があり、ピアニスト美野春樹氏による演奏も行われて、楽しく、充実した会となった。
十一月二十六日(水)の秋の吟行会では東京都中央区の浜離宮恩賜庭園を散策。
浜離宮朝日ホールリハーサル室で句会を行った。
- 第一位
- 雪吊に雨の風格ありにけり
皺波生む一羽の鴨を見て飽きず - 小林 量子
- 第二位
- 錫色の雨が重たい散紅葉
淋しさを断ちて落葉の降り急ぐ - 星野 一惠
- 第三位
- 世が世なら出入りかなわぬ冬帽子
摩天楼江戸の池面にゆるる冬ぐ - 橋本 和葉
参加者は三十九名。冬の嵐ともいうべき天候の中を、よくお集り下さったと思う。
一年の活動を恙なく終えることができ、ほっとしている。次年度に向け、さらに充実した活動を計画したい。